看護学生が「リラクセーション技法」を試したときの反応と学んだこととは?

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看護師の仕事は、患者が元気になるように(治療的な)ケアをすることです。病気や怪我を防いで、健康を維持するための(管理的な)ケアも仕事のひとつです。健康でいるためにはからだとこころ、どちらのケアも必要です。

看護師になるためには、からだや病気のことをたくさん勉強する必要があります。授業のなかには、「リラクセーションの看護技術」というものがあります。看護師のこころのケアとして、「リラクセーション技法」(リラックス方法)を学びます。看護師が患者にリラックスケアをすることで、痛みをとったり、手術や検査の不安をとったりすることができます。

リラックスの効果やメカニズムはまだわかっていないことが多く、さまざまな分野で研究が行われています。「リラクセーションの看護技術」の授業の一環として、看護学生が4つのリラックス方法を試した実習が論文で報告されています。

学生のリラックス方法を試したときの反応と、感想をみてみましょう。

実習の方法

授業は2クラスに分かれて、それぞれ50名ずつ、計100名が患者役として参加しました。講義を受けてから、4つのリラックス方法を順番に試しました。クラスによって①漸進的弛緩法と②自律訓練法の順番だけ入れ替えて、行われました。

反応は、試す前と試した後の血圧と脈拍の変化をみます。

また、Profile of Mood States(POMS)で、気分を測ります。POMSは「緊張」「抑うつ」「怒り」「活気」「疲労」「混乱」の6つの気分を、65項目の質問に5段階で答えてもらうので、気分の変化を見ることができます。

実習がすべて終わったら、感想をレポートに書いてもらいます。

4つのリラックス方法

①漸進的筋弛緩法

生理学者のE.ジェイコブソンによって開発された方法です。からだの力を抜いてリラックスした状態をつくります。

■方法
1.床にマットを敷いて仰向けで寝ます。
2.からだにぎゅっと力を入れて緊張した状態(筋緊張)を7秒間続けます。
3.そのあと一気に力を抜いて(筋弛緩)だらっとした状態を15秒間続けます。

両手→両腕→お尻→お腹・腰→胸・背中→首・両肩→おでこ・まぶた・あごの順番に、深呼吸を組み合わせて全身の力を抜いていきます。

②自律訓練法

J.H.シュルツが瞑想にヒントを得てはじめたリラックス方法です。決まったことばをこころのなかで唱えて、自己暗示をかけます。決まったことばは「公式」と呼ばれて7つあって、段階的にリラックスが深まるようにできています。

背景公式「気持ちが落ち着いている」
第一公式 安静練習「両腕が重い」
第二公式 温感練習「両腕が暖かい」
第三公式 心臓調整練習「心臓が静かに規則正しくうっている」
第四公式 呼吸調整練習「自然に楽に息をしている」
第五公式 腹部温感練習「お腹が暖かい」
第六公式 額部冷感練習「額が気持ちよく涼しい」

今回は、比較的簡単に自分でできる第二公式までをやります。

■方法
1.床にマットを敷いて仰向けで寝ます。
2.「気持ちが落ち着いている、はいどうぞ」というナレーションが流れて、1分間BGMが流れる。
3.BGMが流れているあいだは、公式を繰り返す。
4.1分間唱えたら、消去動作をして次の公式に進みます。

消去動作(消去運動)というのは、リラックス状態からゆっくりと目覚めさせる運動のことです。ゆっくりと手をグーパーして少しずつからだを動かし、さいごは大きくグーっと伸びをして鼻で深呼吸を繰り返しながら目を開けます。

③音楽療法

音楽療法は、ふたつあります。自分で音楽を演奏したり歌ったりすることでリラックスする方法と、音楽を聴くことでリラックスする方法です。

今回は「働く女性のストレス解消」というバイオミュージックを聴いてもらいました。バイオミュージックは、人がリラックスするように働きかける音楽です。音楽療法として使われるように、科学的な実験をしてつくられました。

BGMのようになんとなく聞くのではなく、自分がリラックスするために聴いてるという意識で聴くと効果があります。このことは学生に説明してから、聴いてもらいました。

④アロマテラピー

ハーブからできるエッセンシャルオイルのなかには、薬効成分と芳香成分が含まれています。薬効成分によって血流が良くなったり、匂いが刺激になってリラックスできたりします。授業中に16種類の香りを試してもらいました。

実習では、サノフロール社のリラックスブレンド(マンダリン、ゼラニウム、ローズウッド、スイートオレンジのブレンド)を綿球に1滴垂らして枕元に置いてもらいました。

実習でわかったこと

測定の結果

②自律訓練法を先に行ったクラスのほうが、①漸進的筋弛緩法の前後に血圧の低下と脈拍の減少が大きくみられました。先に自律訓練法を行って、集中しやすなったからだと考えられます。

POMSの結果は「緊張」「抑うつ」「怒り」「活気」「疲労」「混乱」の気分のうち、「活気」以外が時間を追うごとに得点が下がっていきました。

リラックスと反対にあるのは「緊張」です。リラックスは「緊張」だけではなく、抑うつ感やイライラ感、疲労感までも軽くしてくれるということがわかりました。「気分をよくする」効果もあるようです。

②自律訓練法を先に行ったクラスは「活気」の得点も上がっています。

どの影響なのかはわかりませんが「いきいきしている」気分になることもあるということがわかります。

レポートの結果

①漸進的筋弛緩法がリラックスできたと答えた学生は71.6%、②自律訓練法は46.7%でした。自律訓練法は自己暗示の要素が強いので、集中することがポイントです。集団での実施は環境がよくなかったと考えられます。

①漸進的筋弛緩法では「緊張のさせ具合がわからなかった」「筋弛緩の時間が短かった」という否定的な意見がありました。

②自律訓練法では「効果が出そうなときに次に進んでしまった」「暗示に対応できなくて焦ってしまった」という意見がありました。

何回か繰り返したり、ひとりで行ったらもっと効果がでるかもしれません。

①漸進的筋弛緩法や②自律訓練法は、練習して慣れが必要なリラックス方法でもあります。

③音楽療法については、否定的な意見が9.3%とほとんどありませんでした。

受け入れやすいリラックス方法だということがわかります。

バイオミュージックを聴いた時間は8分しかありませんでした。

①漸進的筋弛緩法や②自律訓練法は20分だったのに、③音楽療法のほうが効果がでている結果となりました。

④アロマテラピーは、「好みの香りではない」「香りが強すぎて気分が悪かった」などの否定的な意見が多く、4つのリラックス方法のなかで肯定的な意見が少ない結果となりました。香りの好みや強さが結果に大きく影響したようです。

自分が好きな香りや「自分がリラックスできそうな香り」を選んだほうが、リラックスの効果が期待できるでしょう。

まとめ

実習の目的は、実際にリラックス方法を経験してリラックスする大切さに気がついて欲しいからです。リラックスする大切さに気がついてほしい理由は、2つあります。

ひとつは学生が看護師になったとき、患者にリラックスケアができるようにするためです。

「『心に気を配る』という援助の具体的な方法を学んだ」「清潔面などの援助に囚われてこころのケアを怠っていたと気がついた」など、リラックスケアの大切さを実感している感想が多くありました。

もうひとつは、自分自身のストレスをコントロールできるようになってほしいという先生の願いもあったようです。看護師という職業はほかの仕事と比べてもストレスが多い仕事だと言われています。

自分自身がストレスを感じたときに、意識的にリラックスできるような方法を知っておくことが必要になってくるからです。

「自分自身にこころのゆとりがないと、人に優しく接したりできないと気がついた」「ストレスやリラックスについてあまり考えたことがなかったが、改めて自分を見つめる機会になった」「久しぶりにこころが休まった気がした。こころが落ち着いて家に帰って、やる気が起きない料理や洗濯をしている自分に驚いた」などのコメントがありました。

レポートをみると、ほとんどの学生がリラックスの効果を実感していました。そして、患者へのこころのケアと自分へのこころのケアの大切にも気がつきました。

さいごに

半数(51%)の学生が③音楽療法が1番リラックスできたと答えています。身近にあって手軽に聴くことができる音楽で、自分のこころのケアをしてみましょう!

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