生演奏は人の体とこころにどのように影響するのか?

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音楽を聴いたときの影響やその影響を与えるメカニズムは、音楽心理学や脳科学の分野による研究で多くのことがわかってきています。そこには体の恒常性や免疫力、リラックス効果、ストレス緩和といった、科学的なデータもあります。

今回は論文「生演奏が生体とこころに及ぼす影響」をご紹介します。

生演奏の実験方法

サックスとピアノ、歌唱を45分間、64名(10歳代〜80歳代)の人に聴いてもらいました。音楽は自然や季節感がイメージできて、懐かしい気持ちになれるような音楽を選び、前半と後半の間にはストレッチも入れています。

生演奏を聴いた後、血圧、脈拍数、顔の皮膚温度を計測し、どんな気持ちであるかのアンケートをとりました。

結果

血圧

演奏前後の血圧値を比べると、71%の人の血圧が低下しました。

脈拍

脈拍数が減った人が88%で、ほとんどの人は脈拍がゆっくりになっていました。

皮膚表面温度

サーモグラフを使って5名の顔の皮膚温度を測った結果、4名は表面温度が上がりました。

こころ

演奏前は、苛立ち>不眠>憂鬱>苦痛>不安の順でネガティブな気持ちがあると答えています。「はい」もしくは「どちらとも言えない」を合わせると2/3以上になります。

生演奏後のアンケートでは83%の人がこころの変化を感じたと答えていて、感じなかったと答えた人は一人もいませんでした。リラックスできた、楽しかった、癒された、感動したとポジティブな変化がアンケートからみられました。

生演奏を聴いたときの体とこころの変化

体の変化

現代社会にはたくさんのストレスがあります。ストレスで体やこころが疲れると、イライラしたり不安な気持ちになって、食欲がなくなったり眠れなくなったりします。ストレスがある生活が続くと、体には悪い影響が出ます。自律神経系や脳神経系、ホルモン系や免疫系といった、「健康」を維持するのに必要な機能のバランスが崩れてしまうのです。

「健康」を維持するためには、リラックスすることが大切な役割のひとつです。

自律神経系は交感神経系と副交感神経系でできています。基本的に人が起きているときは交感神経が優位な状態で、リラックスしたり寝るときは副交感神経が優位な状態です。

交感神経が優位なときは血圧も高くなり、脈拍も早くなり、体もこころも活動的な状態です。逆に副交感神経が優位のときは、血圧も下がって、リラックスした穏やかな状態になります。

生演奏を聴いて、脈拍と血圧が下がったのは副交感神経が優位になったからです。

音楽によって心拍数、呼吸数の減少、血圧の低下、皮膚表面温度の上昇についての研究結果は多く報告されています。

自律神経系は短い時間でも変化すると言われているので、静かな音楽を数分聴いただけでもリラックスします。ホルモンを調節する機能や免疫系は変化が出るまで時間がかかるので、生演奏を数分聴いただけでは、変化はわかりません。

しかし、自律神経のバランスが整うことで、ほかの機能も本来のはたらきを取り戻し、「健康」が保たれるようにはたらきます。

顔の皮膚温度が高くなったのは、こころの変化によるものと考えられます。人は感覚器(五感=聴覚・視覚・触覚・味覚・臭覚)から刺激を受けとり、記憶と照らし合わせます。

今回の実験では懐かしさを誘うような曲を選んでいるので、曲を聴いたときに照らしわせた記憶のイメージに強く影響していると考えられます。血流量が29%増えているという結果から、曲のイメージによって血の巡りがよくなって表面温度が上がったと言えます。

こころの変化

演奏前のアンケートで47%の人が苛立ちや不安があると答えています。約半数の人が交感神経優位な状態でとても緊張しながら生活しているということがわかります。

演奏後の気持ちの変化があった人は、サックスの独奏やピアノの連弾、歌唱でこころが和んで、交感神経の緊張がほぐれたとアンケートで答えています。

癒された、幸せな気分、という答えのほかに、肩こりが治った、体が軽くなった、元気が出たという意見がありました。心だけではなく体の変化も、実際に実感できたということです。

癒し系の音楽としては、自然をイメージする歌や曲、母さんの歌、アメージンググレース、クリスマスの曲など、聴くひとに馴染みの曲が多く、親近感がモテたことがこころの変化に繋がりました。

音楽と癒しの関係

このように研究結果をみると、音楽が人の体と心に大きく影響していることがわかります。人の体とこころが緊張状態からリラックス状態に変化する、人は音楽によって「癒される」のです。

音楽による癒しは、ギリシャ神話や旧約聖書に病気の治療に音楽が使われたことや、プラトンやアリストテレスが病気治療に音楽が役立つと勧めたと記録が残っています。

現代では「音楽療法」と呼ばれて注目されています。

音楽療法は、不安や痛みを軽くする、体のバランスを整える、自然治癒力を高める、など生活習慣の予防から治療、など様々な目的で用いられています。

音楽の5要素は、高低、強弱、音色、音程(メロディー、ハーモニー)、連続期間(リズム、テンポ)があります。イライラしているとき、憂鬱なとき、不安があるとき、痛みがあるときで選ぶ曲が変わります。

感情には生理的な感情、快・不快の感情、美的感情、宗教感情などがありますが、選ぶ曲によって気持ちが変わる、流されます。

生理的な感情を生み出す大脳辺緑系という脳は、聴覚に直結しています。

喜怒哀楽の感情や空腹、眠気、性欲などは大脳辺緑系に深く関係しているので、感情が揺さぶられ、癒されるのです。

人が癒される方法は人によって違いますが、①自然の中で癒されたいと思うときは、デジタル的な音楽で満足でき、②人に慰られたいと思うときは、アナログ的な音楽で叶えられ、③仲間、社会によって癒されたいと思うときは、音楽会やライブに行くことで達成されます。

NO MUSIC NO LIFE

生演奏を聴いて体とこころが癒される時間を持って欲しい、との思いからこの実験が行われました。「生活の中の音楽による癒し」の公開講座を企画、その変化を記録し、明らかにされました。実際に生演奏は人にくつろぎを与えて、緊張をほぐしました。実験に参加した90%の参加者は、参加してよかったと答えています。

人類が生まれたときに音楽も生まれました。原始時代の人も、現代を生きる人も「音楽なしでは生きられない」のは同じなのかもしれません。

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